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家族信託

家族信託における受託者の役割 ②

目次

受託者の責任

家族信託の受託者には、大きな権限が与えられている代わりに責任もあります。

受託者の損失てん補責任

受託者の任務懈怠により信託財産に損失が生じたときは、受益者は受託者に対し、当該損失のてん補、信託財産に変更が生じた場合は現状の回復を請求できるというのが原則です。ただし、原状回復が著しく難しい、あるいは相当な費用がかかってしまう等の事情があるときは、原状回復の請求が制限されます。

受託者が信託契約に違反して信託事務の処理を第三者に委託したときに、信託財産に損害を生じた場合、受託者は第三者に委託をしなかったとしても損失が生じなかったことを証明しないと、てん補の責任を免れないとされています。

受託者が忠実義務・利益相反行為の制限又は競合行為の制限に違反した場合、受託者は当該行為によって得た利益の額と同額の損失を信託財産に与えたものと推定します。

ただし、受託者が信託財産に損害を与えた場合、受益者は受託者の責任を免除することができます。

受託者の変更

受託者の任務の終了とは、信託自体は継続していくが、何らかの理由により受託者が交代する場合をいいます。受託者の任務が終了する理由とは、以下の場合があります。

①受託者である個人の死亡
②受託者である個人が成年後見又は保佐開始の審判を受けたこと
③受託者が破産手続き開始の審判をうけたこと
④法人が受託者であったときに、合併以外の理由で解散したとき
⑤受託者の辞任
⑥受託者の解任
⑦信託行為によって定めた事由

⑤の受託者の辞任については、委託者と受益者の同意を得て辞任することができます。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めによるとされています。なお、委託者が現に存しないときは、委託者と受益者の同意による辞任はできないとされています。
受託者の辞任について、信託契約でどう定めるかというのは、信託契約を組成する上で重要なポイントになります。

⑥の受託者の解任については、委託者及び受益者は、いつでもその合意により受託者を解任することができます。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めによるとされています。なお、委託者が現に存しないときは、委託者と受益者の合意による解任はできないとされています。さらに受託者にとって不利な時期に解任をしたときは、やむを得ない場合を除き、受託者の損害を賠償しなければならないとされています。

この受託者の解任についても、信託契約でどう定めるかというのは、信託契約を組成する上で重要なポイントになります。
信託のスタートは、委託者と受益者が同一人物になることが多く、両者の合意で解任できるということは、結局その人一人の意思でできてしまうということになります。委託者=受益者と受託者が一時的な感情で対立してしまった場合、委託者=受益者が「お前なんかクビだー」と感情に任せて言ってしまったら、本当に解任してもいいのかという問題です。ここにどういう制限を課していくか、ケースバイケースで検討する必要があります。

新受託者の選任

上記の理由で受託者がいなくなってしまった場合、新受託者の選任については、信託行為に新たな受託者に関する定めがあれば、その定めに従って選任します。
信託行為に定めがない場合、若しくは信託行為の定めによって選任された者が引き受けなかったときは、委託者及び受益者は、その合意により新受託者を選任できることになっています。

信託報酬

家族信託の場合、信託行為に定めがあれば、受託者が信託財産の中から信託報酬を受けることができます。信託財産が、将来受益者がいなくなって信託終了したときに受託者に相続されるという場合、無報酬ということが多いかと思われます。一方で、家族以外の人が受託者になるようなケースだと、信託報酬を設定するような場合もあります。
家族が受託者になる場合、信託報酬が設定できるからと言って、大した事務処理もないのに高額な信託報酬を設定すると、税務署から贈与を疑われることもあります。

まとめ

家族信託における受託者の役割① ②で見てきた通り、受託者には大きな権限と責任があります。受託者の地位の安定を図りつつ、受託者の暴走をいかに防ぐか、委託者と受益者がどうチェックをしていくか、信託契約にそれをどう盛り込んでいくかを細かく事案に応じて検討していく必要があります。家族信託では、信託法の規定があるが、信託契約で個別に信託法とは違う規定を設定できる項目がたくさんあります。
家族の事情に応じた信託契約作成のサポートをさせて頂きますので、ご検討の際は、是非ご一報下さい。

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