後見人等が直面する問題
目次
- ○ 後見人等が直面する問題
- ○ 不動産を処分するには
- ・自宅不動産を売却する
- ・賃貸物件に住んでいたが退去する
- ・別荘を売却したい
- ・自宅を貸したい
- ・賃貸マンションを借りたい
- ○ 身元保証人になることを求められたら
- ○ 遺産分割の相続人になったら
- ○ 入退院の手続きや医療行為の決定
後見人等が直面する問題
後見人の業務は、本人の人生の決断のサポートをしたり、本人に判断能力があったらすべきことを、本人の代わりにすることです。
本人の自宅不動産を処分するとき、本人と利害が対立するとき、身元保証人になることを求められたとき、手術などへの同意を求められたとき等、判断に迷う場面はたくさんあります。
不動産を処分するには
老人ホームに入居する際、自宅に戻り生活することが困難な場合、入居費用を捻出するために自宅を売却することがあります。
本人の自宅であった不動産を売却や賃貸をする場合には、家庭裁判所の許可が必要になります。民法では、家庭裁判所の許可なく売却等をした場合には無効になると規定されています。
家庭裁判所の許可が必要なケースと必要ないケースを、具体例でみていきましょう。
自宅不動産を売却する
一番単純な事例ですが、もちろん家庭裁判所の許可は必要です。
賃貸物件に住んでいたが退去する
不動産の売却ではありませんが、自宅の賃貸契約を解除するには、家庭裁判所の許可が必要になります。
別荘を売却したい
日常居住している以外に別荘がある場合、この別荘を売却するには家庭裁判所の許可は不要です。賃貸している収益物件を売却する際にも許可は不要です。
自宅を貸したい
現在住んでいた自宅を、老人ホームに入居するため貸し出すといった場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
賃貸マンションを借りたい
自分の不動産を他人に貸す時は、家庭裁判所の許可が必要ですが、他人の不動産を自宅として借りるときは、許可は不要です。
身元保証人になることを求められたら
被後見人が老人ホームに入所する際、身元保証人になることを求められることがあります。身元保証人に求められることは、施設費用の支払いについての保障・介護方針等に関する決定・本人死亡時の遺体の引き取り等になります。
身元保証人になると、施設費用の入金が滞ったとき、後見人等が自腹を切って支払うことを求められます。
後見人には、身元保証人になる義務はありません。老人ホームによっては身元保証人になることを求められることがありますが、費用支払いについては、本人財産から賄うこと、本人死亡時には相続人がいればその人が、いなければ後見人が葬儀・埋葬をするので、身元保証人がいなくても大丈夫であることを説明し、理解を得ましょう。
最近では、原則身元保証人を付けることが必要ですが、後見人がついている場合は、身元保証は必要ないという施設も増えてきています。
遺産分割の相続人になったら
後見申立ての理由で、上位になるのは相続手続きです。相続手続きの際、相続人に判断能力がない場合は、後見人の申立が必要になります。またこの場合は、相続人である家族・親族は利益相反になるため、後見人にはなれません。弁護士や司法書士等の第三者が後見人になる必要があります。
相続が発生したとき、既に後見制度を利用して、家族が後見人になっていた場合も問題になります。
例えば、父が亡くなり相続が発生したが、母には既に長男が後見人になっていたという場合、母と長男は利益相反になるため、後見業務はできません。この場合は、後見監督人がいれば、後見監督人が母の代理人となります。いない場合は家庭裁判所に特別代理人を選任してもらいます。
入退院の手続きや医療行為の決定
本人が体調を崩し、入院が必要になった場合は、入院の手続きをします。手術が必要な場合には、手術や輸血の同意書への記入を求められることがあります。この医療行為への同意は非常に悩ましいです。後見人には、医療について同意する権限はありません。
医療の現場では、手術の前に、同意書にサインを求められます。本人が弱っていてサインできない場合は、親族が代わりにすることがあります。親族が後見人になっている場合は、この流れでサインをするので問題は表面化しないのですが、第三者が後見人になっている場合は、対応に苦慮することになります。
医師側は、誰か関係者の同意を得ておきたいという気持ちがあります。後見人は同意をする権限はありませんが、本人のためになることはする必要があります。
医師に「同意がなければ手術はできません」と言われてしまったら、本人のためにはなりません。
この問題は非常に難しく、後見人が一番悩むことだと思います。
ひとつは、被後見人が判断能力のあるうちに、自分の医療に関してどのような希望を持っているかの「医療行為・延命治療についての方針を公正証書で作成する」ことです。公正証書を作ったからといって、医療現場でこの通りにしなければならない義務が発生するわけではないですが、患者の自己決定権は最大限尊重されますので、作成する意味はあります。
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